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いわやん(京都)
「私は、ピカソの作品を盛んに引用することで、かえって彼の影響力から自由であったと思います」
同美術館の入口横で、リキテンスタインのインタビュー・ビデオが流されていたのですが、その中で、上記のような意味の言葉がありました。
字面だけを見ると、すごく傲慢な開き直りの言葉のように読めるかもしれませんが、その時、私が感じたのは、むしろその逆で、そこまで真面目にピカソに向かい合ったのかと。その健気さに胸が詰まる思いがしたのです。
ヘビに睨まれたカエルなどという言い方がありますが、リキテンスタインという人は、ヘビ(ピカソや他の感動の様々)に魅入られて、身を竦(すく)ませながらも、逃げずに、じっと見つめ返して、ついには、ヘビの鱗の美しさだとか、そういうものを見極めた作家だと形容することが出来るかもしれません。
主催者の「あいさつ」に、
「リキテンスタインと言えば、日本では、60年代のポップ・アートの代表作が比較的良く知られていますが、初期から最晩年に至るまで、その芸術は多様な展開を示しており、そこには単にポップ・アートという視点では、おさまりきれない一大宇宙が形成されています。」 とありますが、鑑賞後、わたしもまさにそんな感想を持ちました。マンガの1カットを題材にしたような作品は、リキテンスタインの格好の目印(宣伝材料)にはなったのでしょうが、本当の彼らしさは、そのためにかえって隠れてしまうことになったのかもしれません。
本展は、そういう意味で、リキテンスタインという作家をとらえなおすのにうってつけの機会だと思います。 (・・・もっとも、私の観たところ、リキテンスタインらしさとは、「一大宇宙」などというものではなくて、小さな花のようなもので、顔を寄せて静かに目を凝らして、「ああ、ちゃんと咲いてる」とうれしくなるような、そんな感じでしたが・・・)
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