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いわやん(2000,7,08)
春挙については、当時は竹内栖鳳と並び称される大家だったということくらいしか予備知識を持ち合わせていませんでした。ですから、実は、観に行く予定はしていなかったのですが、先日、土田麦僊に関する記事を読んでいたところ、西欧の影響について、<さすがに栖鳳と春挙は、深くは惑わされなかった>というくだりがあって、ふと興味をもったというわけです。
さて、展覧会を観ての感想ですが、春挙の絵の素晴らしさは音楽のようでした。旋律があり、調和があり、主題が実に見事に作品化されていたからです。
ジャンル分けすれば、様式美ということになるのかもしれませんが、様式とは、たぶん本来は、ノウハウの塊だったのでしょう。どんなに優れた資質をもった画家でも、様式の習得なくして場当たりに的に絵を描くなら、おそらぐ生涯かかっても、ものにできる作品はごく僅かではないかと思います。絵に限らず、どんな分野においても、我流は決して効率の良い方法ではないですから(もちろん、それでも我流の道を選ぶ人はいて、ごくこぐ稀に独自の開拓をする人も現れるから世の中おもしろいのですが)。
そして、様式にのっとると一口に言っても、使い手による差はおのずと生じてきます。春挙の様式の会得が図抜けていたと同時に、用い方にもひじょうな的確さがあったということでしょう。
それにしても、「見てください」、「ほら、おもしろいアイデアでしょう」といった作品が近代以降どんどん増えていくわけですが、春挙の作品にはまったくそんなところがないのですね。作品のほうに客引きするようなところがほとんどない。ただ、こちらの目がひきつけられるわけです。ああ、きれいだとすっと目に映る。このことは、今のような時代にあっては、何と言うのでしょう。根本を問われるような思いがしました。
そして、眺めていても、メッセージを解読せねばならないような、そういうこともなくて・・・。ただ、そこに一つの景色があると。その景色を絵にした画家の後姿がうかがえるだけで・・・。いい展覧会でした。、
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