No.163 Last Up Date 2000,10,06

ユトリロとヴァラドン展

大丸梅田店

会期 2000,9,13-10,09
休館
料金 一般 900 大高生700

 



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母と子、血を分けたその光と影

ユトリロとヴァラドン展

日本にもファンの多い著名な画家、モーリス・ユトリロ(1883-1995)。しかし、詩情溢れるパリの街並みを描き続けた彼にとって、多大な影響を与えた母親、シュザンヌ・ヴァラドン(1865-1938)の存在については、これまであまり多くを語られたことはありません。お針子やサーカスの軽業師など、様々な職業を経てヴァラドンが職業モデルとなったのは15歳の頃、パリのカフェがルノワールやロートレックなど、多くの才能で賑わっていた当時、彼らからミューズ(女神)と賞賛され、奔放な生活を送っていました。そして18歳の頃、父親のわからぬままにユトリロを生み落とすと、その後は自らも筆を執り、ドガを中心としたパトロンたちの援助も手伝って、画家としての才能を開花させたのです。
心の赴くままに生き続け、大胆で激しく、官能的な作品を生み出した母、ヴァラドン。一方、内向的な性格のあまり自分の殻に閉じこもり、若くしてアルコール中毒になりながら、静謐な作品を描き続けた息子、ユトリロ。
本展は、この二人のドラマチックな人生にスポットを当て、血のつながった親子であるにもかかわらず、あるいはそうであるからこそ、まったく違う世界観を描き続けたふたりの作品を同時に観賞することができる、大変興味深い展覧会です。出品作品はパリ郊外のモーリス・ユトリロ美術館所蔵作品を中心に、ユトリロ50余点。ヴァラドン20余点で構成されています。」(同展チラシより)

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出品作品


ほか

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訪れたのは、9月18日月曜日の夕方。
ほとんどいつも満員のこの会場だが、めずらしく閑散。三、四分入りといったところ。デパートの狙いどころは、ウィークデー前半の夕方ということか。
観客の層は、勤め帰りのOL、カップルが三分の二くらい。あとは、女子学生、中高年の女性、夫婦といったところ。
雰囲気としては、印象的だったのはとても静かだったこと。途中で、ふと気づいたのだが、そこそこの観客がいて、これだけ静かなのはちょっとめずらしい。それだけ、皆が集中して鑑賞していたのだろう。、

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ご感想などお寄せください。

tomo(2000,10,06)
beauxarts@nikkeimail.ne.jp

 ユトリロの展覧会は解釈が難しいと思った。基本的な感想としては、ユトリロはやっぱり孤独な人なんだな、というもの。味があると言えば、あるのかもしれない。逆に、あまりに無機質で人間味の無い乾いた絵だとも言える。
 彼の絵において、人を描く際には非常に小さく描き、その存在を認めたくないかのようである。これはどのような心理によるのであろうか。心から人の存在を認めたくないのであれば、そもそも人の絵は描かないであろう。小さいながらもあえて描いたのはなぜか。本当は人々の中に入りたいのに、入る勇気がない、遠くから隠れて見ている、そんな心境なのだろうか。空も暗くどんよりとしている絵が多い、これも彼の心境を表しているのだろう。
 そんなわけかどうかは分からないが、彼の絵は建物(無機物)を重視したものが多い。しかもユトリロの構図の多くにおいて、線や面はゆがみ、また遠近法もおかしく消滅点の存在もはっきりしない。やはり整然と絵を描くことを妨げる心理的な何かが存在しているのだろう。
 結局私の解釈としては、彼は孤独の中で人との接触を夢見ながら、同時に、それをかなえられない自分の弱さを感じながら、自分の住む街を描き続けた、という感じだろうか。
 ヴァラドンについては少数の作品があるだけだった。彼女はデッサンをドガに誉められたらしいが、それは隈取りの強調からしてもっともな感じがした。ドガはそもそも日本の浮世絵の影響を受けていたから、隈取りを強調したヴァラドンに同じ趣味を感じたのだろう。ただ彼女の作品は少なかったので、全体像をうかがえるほどではなかった。
 展覧会全体の感想としては、人間味を味わうことができておもしろかったです。

いわやん(2000,9,18)
 まとまった量のユトリロを見るのは、約二年ぶり。美術館「えき」KYOTOの「ユトリロ展」以来です。したがって、いきおいその時の印象と比較することが多かったのですが、今回あらためて気づいたこと、意識されたことについてお話します。
 まず、孤独についてですが、
 ユトリロその人が孤独であったらしいこと、そのため精神的にも不安定であったらしいということがあって、これまでは絵にもそういう傾向を見出しがちだったのですが、
 よく見ると、多くの絵で、視点が通りの真中におかれていたりする。
 一見すると、窓越しに街並みを描いているような、そういう控えめな雰囲気(疎外感)があるのですが、構図を見ると、道の真中にキャンパスを立てて描いているような、そういう視点が多いわけです。
 いい場所から、しかも辺りを広く見渡して描いている作品が多いんですね。カメラのレンズにたとえれば、明らかに広角レンズの描写が多い。
 人は内省的になると、たいていは視野が狭くなりがちで、マクロ(接写)レンズや望遠レンズの見かたになるものだと思いますが、ユトリロの絵はそうではありません。
 つまり、ユトリロは私生活で孤独であり精神的にも不安定であったかもしれないけれども、少なくとも、絵についてはそういう気分では描いていないということです。感情や情緒を表現するために絵を描いていたのではなかったのでしょう。
 とすると、ユトリロは何を描こうとしていたのか。街角を通して何を表現しようとしていたのかということになりますが、
 さきほど、視点と視野についてお話しましたが、撮影ということでいえば、もう一つ重要なのものに、シャッターチャンスということがあります。
 街角の風景ですから、別に動いたりするわけでもなく、シャッターチャンスなんてあまり関係なさそうに思われる方もおられるかもしれませんが、実際にカメラで何度か撮影すれば、まったくそうではないということにすぐに気がつかれることでしょう。
 同じ場所を同じ構図で撮影しても、光の条件が違えば、印象はずいぶん変わるものなんですね。
 ユトリロの描く街角は、たぶん裏通りが多いと思いますが、たとえ裏通りであっても、日が差し込んだ瞬間であれば、ずい分印象は違います。スポットライトが当たれば、脇役、端役もその瞬間は輝くわけです。
 ところが、ユトリロはそういう描き方はしません。裏通りの街並みを曇天の時に描くわけですね。わざわざそういうシャッターチャンスを選んでいる。
 ユトリロの視線を言葉にすれば、たぶんこういうことになるのではないでしょうか。
 多くの人が見過ごしがちな裏通りを、普段の素顔の表情で絵にしよう、と。
 そして、そのココロは、
 忘れられた存在を、飾り立てたり別のものに仕立てて注目されるようにするのではなく、そのままの姿でそのものらしい性質のままで、自分は紹介したいのだ。ほら、地味で取り柄がないようだけれども、よく見るといいでしょう? と。
・・・待っていれば、いつかはチャンスが来るかも知れない。いつかは自分も白鳥に生まれ変わって主役になれるかもしれないというような、そういう思想ではまったくないわけです。
・・・今のこのままの存在でやっていくだけだ。ただ、気づく人は気づいて欲しい。気づきさえすれば、おもしろいと思ってくれる人もきっといるに違いない。だから・・・
ユトリロが街角風景を描き続けたことには、そんな使命感のようなものがあったようにさえ思われます。
 もちろん、そこには愛されなかった自分自身の投影が読み取れるわけですが、しかし、自分のために街角をダシにするようなそういう感じは認められません。そこのところの姿勢が毅然としているので、いいんでしょう。
 ただきれいなものをきれいに描く風景画ではない。が、さりとて、自分の情緒を風景を通して表現するというような、そういうこともしない。いわば、ポリシーは明確にあるんだけれども、無私なんですね。そのあたりに、何の変哲もないようでいて、多くの人が惹かれ続ける、そんなユトリロの風景画の魅力があるように思います。

 ちなみに、今回は母親ヴァラドンとの合同展なんですが、ヴァラドンとの比較で言えば、
 ヴァラドンはかなりの腕で、ユトリロと比較しても勝るとも劣らないと思いましたが、ただ、
 彼女は絵を描くときは、絵を描くことしか考えていなかったようで、それに比べれば、ユトリロのほうは、自分の存在を絵に見事に反映させていますね。
 さきほど、自分の情緒を絵に持ち込んだりはしていないと言いましたが、直接的にはそうなんですが、奥深いところで、ユトリロの命の叫びというようなものが絵ににじんでいる。
 ヴァラドンはというと、絵については、巧すぎるというか、勘が良すぎたし、人間としても、世慣れていた。彼女にとって、生きるよすがは絵だけではなかったということです。その差が感じられました。

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展覧会のスケッチ

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