No.166 Last Up Date 2000,11,01

小出楢重展

京都国立近代美術館

会期 2000,10,03-11,19
休館 月曜日
料金 一般 1200 大高生900

 



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小出楢重展

小出楢重は、1887年大阪に生まれました。はじめ東京美術学校日本画家に入学していますが、のち西洋画家に転じ、1914年に卒業後は大阪にもどって制作に励みました。
その後、1919年の第六回二科展に初出品した<Nの家族>で樗牛賞を受賞して洋画壇にデビューを果たし、翌年には二科賞を受賞し会友に挙げられました。
1921年から翌年にかけての渡欧は約半年と短く、当時のフランス画壇には失望したようですが、明るい南仏カーニュでの生活は、それまでの晦渋さを脱し、のびやかな筆勢、美しく透明な色彩による洗練された作風への進展となって結晶します。
また1924年には、小出を中心にその後の関西洋画界の核となる信濃橋洋画研究所が大阪に開設されていますが、これは指導者としての新たな活動の始まりを告げるものでした。
さらに1926年、小出は芦屋に本格的なアトリエを構えることになって、制作は一段と充実度を増し、このアトリエから<裸婦の楢重>とも呼ばれる裸婦や静物画の代表作が生まれていきました。
しかし、小出は精力的な制作と指導を続けながらも、惜しまれつつ、1931年に急逝しています。
それから70年が経ましたが、小出は生まれ育った大阪特有の濃密な美感を示す個性豊かな作品によって、わが国近代絵画の偉才として不動の評価を得ています。
今回の展覧会では、文字通り<洋画家・小出楢重>の全容に迫るべく、未公開作品や近年の展覧会には出品されることのなかった油彩画・ガラス画を含む、代表作約120点を集め、あらためて小出の画業を振り返ります。」(同展チラシより)

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出品作品


ほか

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訪れたのは、10月24日の夕方近く。館内は意外にも盛況で、七、八分入りといったところ。しかも、若者が多い。
が、しばらくして、それはどこかの学校の一団が訪れていたためと判明。私服の学生なので、授業できている若者と個人できている若者の区別はつかないが、それでもその一団が約半数を占めていた様子。
学生以外のところでは、中高年が大半。ただし、いつもと違って男女比が同じくらいだった。あと外国人が多かったが、観光だろう。ただし、外国人がどの絵に注目しているかは、やはり多少気にかかった。コンプレックス?
雰囲気としては、おそらく美大生だとはいえ、若者の多くが比較的丹念に鑑賞していたのが特筆される。
今の若者の目には、むしろかえって新鮮に映るところがあるのだろうか。

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ご感想などお寄せください。

いわやん(2000,10,24)
彼が絵心に恵まれていたということは、まだ学生の頃のスケッチを見てもわかりますし、卒業する頃の岸田劉生風の自画像をみればちょっと憎らしくなるほどです。うまく言えませんが、劉生の絵を真似ようとしているのではなくて、劉生の絵で気づいているだけなのですね。絵の秘訣の一つを。
そのような例は、静物画にもあって、静物画のほうでは、セザンヌを彷彿とさせますが、この場合もセザンヌを真似ようとはたぶんしていない。
ですから、一見似ているんだけど、別な絵になってる。彼のオリジナルというには、まだ熟成が足りませんが、真似ではない。
小出が、ただ小手先が器用なだけであれば、もっと模写に近くなってるはずで、そうならなかったのは、小出自身の絵心が強かったからだと思うのです。
誰かと比較するとすれば、堂本印象ですね。
極論すれば、堂本印象は図案家ですが、小出楢重は絵描きなんですね。ただ、小出においては「芸」が不足している。
彼とほぼ同時代の画家に、安井曽太郎がいますが、安井は一時期ひじょうに悩みながら、自分のスタイルを見出し確立し、それを芸の域にまで高めます。
その安井と比較すると、小出は試行錯誤の段階を卒業することが出来なかったと思わざるをえません。(安井は長寿で小出は夭折しており、その明暗が大きいわけですが。)

批判的なことばかり言いましたが、今回の展覧会に落胆したかというと、決してそうではありません。魅力についてお話すると、そうですね、
一言でいえば、絵を描く楽しさが伝わってくる展覧会でした。
小出の絵は、絵が好きになる絵なんです。小出は、芸術家としての運には恵まれなかったように思いますが、絵描きとしての天分、冥利というようなものについては、十分堪能したのではないかと思えます。

最後に、小出ならではのオリジナリティは何かということですが、
萌芽のようなものは感じられました。
たとえば、静物画と晩年の裸体画などです。
初期の静物画はセザンヌ風なんですが、後になると、セザンヌの影はなくなります。どうなるかというと、ちょっとおもしろいのですが、オーケストラのような静物画を描くようになるのですね。オーケストラのような、というのはつまり、全体で響かせるということです。真中とか、どこかに中心があるような構成ではなくて、画面に広くいろいろなものを散りばめて、色彩なんかでリズム感を出して全体で曲を奏でるというような手法ですね。
完成度は足りませんが、そのあたり、小出ならではの個性の萌芽のようなものは感じられました。
裸体画の場合は、同じような画のスタイルで、モデルポーズや小物だけを変えて繰り返し描かれているものがあったのですが、その作品群がとてもいい感じだったのです。
小出には芸がないなどと言いましたが、それらの作品には、名人芸ではないけれども、職人芸的な、無作為のような落ち着きがあるんです。
どっしりと腰を据えて轆轤をひくというような、そういう感じがある。
完璧な傑作というのではないんですが、それぞれに味わいがあるのですね。とてもいい絵だと思いました。

絵が好きな人におすすめしたい展覧会です。

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展覧会のスケッチ

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